植物は独立栄養のために光合成という代謝を行う。代謝は、生物が生体内での化学反応によって生物の機構と営みに必要な物質を合成したり分解したりする働きを指す。光合成 (photosynthesis) は、葉緑体を含む緑色組織(葉、茎の一部、若い果実など)でしか行われず、非緑色組織(根、花、果実、種子など)は光合成を行う緑色組織から有機物(糖やアミノ酸)を輸送してもらい従属栄養を行っている(庄野ら 2004)。

光合成は、「光と水から酸素と水素イオンと電子を作る」プロセス(明反応)と、「二酸化炭素と水から有機物($C_6H_{12}O_6$:グルコース、$C_{12}H_{22}O_{11}$:スクロースなど)を合成する」(暗反応)プロセス**の2つに分けて考えることができる。

光合成から糖ができるまで
光化学反応(明反応)では、光のエネルギーを利用して水が酸素に酸化されるとともに、二酸化炭素の還元に必要なNADPH2+(電子を介した電子伝達系)とATP(水素イオンを介したATP合成系)をつくりだす。カルビン・ベンソン回路(C3回路)(暗反応)では、生成されたNADPH2+とATPを用いて二酸化炭素から糖を合成する。

光合成から糖ができるまで 光化学反応(明反応)では、光のエネルギーを利用して水が酸素に酸化されるとともに、二酸化炭素の還元に必要なNADPH2+(電子を介した電子伝達系)とATP(水素イオンを介したATP合成系)をつくりだす。カルビン・ベンソン回路(C3回路)(暗反応)では、生成されたNADPH2+とATPを用いて二酸化炭素から糖を合成する。

糖は必要分だけ活動や成長エネルギーとして利用され、余った糖は枝、幹、根へデンプンとしても貯えられる。光合成反応は、例えば以下のように定義できる。CH2Oは炭水化物として標記

$$ \begin{align*} \text{CO}_2 + \text{H}2\text{O} \xrightarrow{} \text{C}\text{H}{2}\text{O} + \text{O}_2 \\ \end{align*} $$

光合成のしくみと樹木内部への糖やデンプンが貯蓄・使用されるしくみ
光エネルギーから葉緑体を介して糖が生成される。糖は、主に葉緑体内に留まるグルコースと幹や根に転流されるスクロースが別々に生成される。スクロースは、転流先でデンプンとなり枝、幹、根に貯えられる。芽生えの時期になると、根の部分に貯えられたデンプンは、糖に分解され成長エネルギーとして利用される。

光合成のしくみと樹木内部への糖やデンプンが貯蓄・使用されるしくみ 光エネルギーから葉緑体を介して糖が生成される。糖は、主に葉緑体内に留まるグルコースと幹や根に転流されるスクロースが別々に生成される。スクロースは、転流先でデンプンとなり枝、幹、根に貯えられる。芽生えの時期になると、根の部分に貯えられたデンプンは、糖に分解され成長エネルギーとして利用される。

植物の成長や維持には、炭水化物(デンプン)と、これを作るための光が欠かせない。逆にいえば、光を制限、葉緑体内で光合成を制限、デンプンを枯渇させるなど、代謝システムが阻害されると植物の成長が制限される。

植物は環境に適用しようとするが、不適切な環境におかれた際はストレスが生じる。過度な環境ストレスが加われば代謝機構に負の影響を与え枯死に至る。例えば、丹下 (2008)は、生育している植物(樹木)に環境ストレスが加わことで光合成反応に差がでることを概念図で示している。植物は十分な環境資源によって光合成速度を高め、糖を成長に利用することが可能だが、資源が偏ると光合成速度に差が生じる。環境資源が多すぎても少なすぎても植物の生長に影響を与えることを意味する。

環境資源と光合成(概念図)
環境資源とは、光や温度、二酸化炭素、酸素濃度、土壌水分、土壌養分などを指す。補償点とは(純)光合成速度(CO2吸収)と呼吸速度(CO2放出)の差が無くなった点を言う。この補償点を下回る(すなわち呼吸速度が大きくなる)と植物は枯死に至る。

環境資源と光合成(概念図) 環境資源とは、光や温度、二酸化炭素、酸素濃度、土壌水分、土壌養分などを指す。補償点とは(純)光合成速度(CO2吸収)と呼吸速度(CO2放出)の差が無くなった点を言う。この補償点を下回る(すなわち呼吸速度が大きくなる)と植物は枯死に至る。

植物は根から水や栄養を吸収しているため、土壌条件の違いが植物の生長に影響を与え易い大きな要因の1つである。水吸収阻害は、蒸散に影響を与えるので空気中のCO2の吸収が小さくなり、光合成速度の低下を招き、糖の生産や酸素の放出量が減少される(光合成の式を参照)。水吸収阻害には、例えば、土壌の乾燥や凍結、過湿による根の活性が低下、アルミニウムが過剰に添加されることにより土壌が酸性化、根の伸張阻害などが考えられている(丹下2008平舘ら 2008

土壌条件が光合成に与える影響
土壌の乾燥や凍結によって物理的に水を吸収し難くなる場含の他、低温は根の通水抵抗を増大させることによって、また過湿は通気性の低下によって根の呼吸を阻害し活性を低下させることによって、根の吸水機能が低下する。酸性土壌での植物の生育阻害要因であるアルミニウムが土中に過剰にある状態は、根の伸長を阻害することが知られており、これも根の吸水の阻害要囚となる。根での吸水が阻害されると葉に水ストレスがかかり気孔が閉鎖する。気孔閉鎖CO2の取り込みを制限するとともに、蒸散が減少することによって葉温が上昇し、光合成速度の低下を摺く。根での吸水阻害が著しく、強光に曝されている場合には、光合成の光阻害の原因となる(丹下 2008)

土壌条件が光合成に与える影響 土壌の乾燥や凍結によって物理的に水を吸収し難くなる場含の他、低温は根の通水抵抗を増大させることによって、また過湿は通気性の低下によって根の呼吸を阻害し活性を低下させることによって、根の吸水機能が低下する。酸性土壌での植物の生育阻害要因であるアルミニウムが土中に過剰にある状態は、根の伸長を阻害することが知られており、これも根の吸水の阻害要囚となる。根での吸水が阻害されると葉に水ストレスがかかり気孔が閉鎖する。気孔閉鎖CO2の取り込みを制限するとともに、蒸散が減少することによって葉温が上昇し、光合成速度の低下を摺く。根での吸水阻害が著しく、強光に曝されている場合には、光合成の光阻害の原因となる(丹下 2008


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